実習指導支援パッケージとは? 2021・4・17編集中
実習の流れの中で、学生にとって初めてのことについては必ず説明をすると思います。そして実習地なりに何らかの資料を用意しているところもあると思いますが、仮にあっても結局学生が何かしらの記載を何度も行い、それに対してのフィードバックをしていると思います。
特に筆者のような「今となっては昔」の指導者に限らず指導者は、学生が実習内で気付き、わかっていってもらいたい思いが強くなるのではないでしょうか?筆者自身を振り返ると
⓵大切なことなので、覚えるのではなくわかってほしい。
⓶学生に頑張って気付けるようになってほしい
③指導者自身の焦燥感
のいずれか、もしくは重複するしていたと思いますが、皆さんはいかがだったでしょうか。実習は学生もでしょうが、指導者にとっても自分のために頑張れる機会、学生に役立つために頑張らなければと思ってしまう機会なので、結果として力が入ってしまうかもしれません(そうではない方もいるでしょうが)。
上記のような指導者の感情は、力にもなりますが洞察なく振り回されると指導者主体の行動への影響が強くなり、改定前の指導の仕方になってしまったり、指導者自身が状況を打開できずにますます不安や焦りにつながってしまうかもしれません。こういった不安材料への対応策として今回「実習指導支援パッケージ」を提案します。
今回の実習の中で行った準備として
⓵筆者なりの「作業とは?作業療法とは?」の説明のための資料作成(元々他職種向け資料)
⓶学生の実習時間中の基本的な立ち回り方の解説
③学生に体験、見学してもらうプログラム、活動の選定と、それらの説明資料作成
→それぞれの短絡的な解説ではなく、作業療法士の立ち回り方、その理由や「つもり」などを記載。
これら実習当日のオリエンテーションで簡単に説明、渡しました。これと前日に翌日の学生の動きを伝えることで、学生は当日の自身の動き方だけでなく、指導者やほかのスタッフの動き方とその理由をあらかじめ知ることが出来るというわけです。
この対策は実は1年生向けに行ったもので、たとえ1年生に対しても安易な見学実習ではなく「作業療法を実際に見て、学んだことの解釈を促せる」「作業療法士がどういった動きをどういった理由で行っているのか」を見学できる実習・・・つまりプレクラークシップな実習を目指すために行ってみました。
結果としては筆者主体としてはストレスフリーに行えました。いちいちプログラムごとに説明や解釈確認する手間が軽減できたので、学生に率直にどう解釈できたか聞けたり、そこからの補足だけで済ませれました。学生にとっても戸惑いなく見学を行うことが出来たと感想は聞けました。
筆者の提案としては先の「実習指導支援ツール」に加えて上記3点の資料を用意することで、どの学年に対してもあらかじめ実習内容と作業療法士の動きを予め伝えることが出来ることが出来ると感じました。この4つを一つにしたものを「実習指導支援パッケージ」としたいと思います。次項では「実習指導支援ツール」を除く上記3項目について説明したいと思います。
実習指導支援パッケージ内の解説
1⃣「作業とは?作業療法とは?」
これについては本サイト内でももともとある程度形にしてきましたが、いかに作業療法や作業を知らない人にわかってもらうよう表現できるかが重要かと思います。
筆者自身実習指導だけでなく他職種に作業療法を伝える機会の中で感じたことは、安易に過剰な医学領域の専門用語に頼らないことです。というのも、製作者自身が専門用語に短絡的に頼って適切な解釈や受け止めが希釈な場合があります。また受け止め相手である学生が理解できない言葉や内容になっても意味がないからです。
逆に専門用語でなくとも誰にでもわかる表現をするということは、自身に適切な理解が成されていることの証明にもなります。一見文献や教科書から引用すればよいように感じますが、「作業療法とは、要はこういうこと」と言い切れるは、なかなか勇気がいります。しかし実習を受けるということは学生に自身の作業療法を伝え、かつ学生の作業療法の理解を適切な方向に導くことでもあるので、元来こういうことは必須なのではないでしょうか?また以降のクリニカルクラークシップに基づく指導では、指導者自身の動きと理由の説明が必要となるので、その際作業療法から外れたことを行うわけにはいきません。自身が作業療法士として適切な意識や考え、動きが行えているかの自己への再評価のためにもやっておいて損はないと思います。
2⃣学生の実習時間中の基本的な立ち回り方の解説
これについてはタイムスケジュール的なものに加えて、具体的にどうしたらよいかなど記載することをお勧めします。学生にとっては初めての場所になるため、周りから適切でない動き方になっていないか不安で仕方ありません(人間として当然でしょう)。なので、注意する前にこちらが求めるものを伝えること、可能な限り簡潔かつ具体的に伝えてあげたらよいのではないでしょうか?
逆に学生が考え到達してほしいことがあるなら、いつ頃からどのくらいなのかを指導者自身が希望というか目標をしっかり提示できないと、「後出しじゃんけん」の「判定」をするだけになりかねません。
3⃣学生に体験、見学してもらうプログラム、活動の選定と、それらの説明資料作成
内容としては
1・作業療法としてのプログラムや活動の簡潔な説明
2・作業療法士としてどういった目的(対象にどういった体験や時間になってほしいか)で行ってい
るかの記載
3・2のために作業療法士として具体的にどう言った役割や動きをしているかの記載
位はあってよいかと思います。この項目はある意味作業療法士として自身の作業療法の動きとエビデンスを具体的に表現することになります。敷居は高いかもしれませんがこれが出来ると学生の理解のスピードアップと指導者・学生の負担軽減が図れます。
上記3項目を作成できることのメリット
正直作るには、人によっては大変かもしれません(無理な人はいると思います)。しかし適切に作れた時にはメリットは計り知れません(あくまで「適切」に作れた場合)。以下メリットを記載します。
1・学生への説明時間と理解してもらうための時間の短縮と高効率化によるゆとり増加
2・見学時間での対象、学生、周りのスタッフへの負担軽減
3・指導者自身の作業療法士としての理解や質の向上
4・新人教育に有効
5・一旦完成すれば、どの学年に対しても使えるため実習の受け入れを選ばなくてもよくなる
※メリット4は、新人への作業療法教育にも、実習指導のマニュアルにもなる
※メリット5については、結局臨床実習でも評価実習でも見学領域は存在すること、見学実習でも理解できるような資料が作れれば、どの学年に対しても理解してもらいやすくなる。
一方、今回提案した実習指導パッケージを作るには、指導者自身の作業療法への解釈や自身の作業療法士としての動きの言語化が必須となるので、これらに問題があった場合、作成そのものが難しいか内容に問題があることにつながりかねません。作れる場合にも作業療法として妥当か、学生に対して妥当かが問われます。
作ることへの敷居は確かにありますが、実習指導自体元々受ける側もきちんと責任がありますし、作ることへの敷居はその延長線に過ぎないと思います。ましてやこれからの臨床実習はクラークシップ的な信仰を行うことを要求されており、作業療法士自体自身の行いを示すことを求められていると解釈できます。筆者の考えに意義があると感じた方はぜひ作成にチャレンジしてみてほしいと思います。
さいごに
作業療法においてはいくら定義や研究が進んでも、共通言語的に解釈することが難しいと感じます。つまり誰にでも「こういうことである」と表現できていることがないと筆者は感じています。定義一つ取っても経験や年齢、学習度合いによって解釈は違ってしまいますが、そのどれもが正解か間違いかと明確に線引きすることは困難です(露骨におかしな解釈は除きますが)。
なので、この項で述べた「実習指導支援パッケージ」の筆者が作成したものを掲載する意義としては、筆者がイメージしたものを視覚的に伝えることであり、内容の出来不出来、使える使えないといったことではありません。
そのまま使える方についてはもちろんですが、筆者としては各自が「自分なら」「自分の施設なら」といった視点や姿勢で各自で作成していくことを望みます。