※ICFバージョン(筆者モデル)を掲載しました。必要な方は下の項よりダウンロードしてください。

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実習指導支援ツールとは?

 

本ツールは、筆者なりの作業療法感や経験クリニカルパスの形式を用いて、障害や作業の意味を学生が実感できるようにと思って形にしました。この形を思いついたきっかけは、筆者が職場でのクリニカルパス(以下パス)を導入や検討に携わってた時期に、学生の実習進行用に自身の指導者としての動きや指導のタイミングをパス形式で製作したのが始まりでした(もちろん学生さんにも渡しました)。この後後輩の実習指導に役立つよう筆者なりの指導内容を盛り込んだものに形を変え、現在の原型のようなものになりました。さらに2年の評価実習用でも養成校に指導の範囲や達成してほしいことを確認し、それに沿った内容や範囲を筆者なりの解釈で新たにツール化し、実際の指導に用いました。


本ツールは、筆者なりの作業療法感や経験クリニカルパスの形式を用いて、障害や作業の意味を学生が実感できるようにと思って形にしました。また、改めていうこともないでしょうが、機能障害や能力障害の根拠となること、対象者が社会に生きる者としてどういったことを望み、また悩んだり不安を抱えているかを理解することを重要視しています。これがなければ焦点化していくことも難しく、また対象者のための作業療法となりえないと思っています。


さらに本ツールは「実習指導」と銘打っていますが、筆者なりの見解での精神科作業療法モデルともいえますし、クリニカルパスをモチーフにしていますので、筆者なりの精神科作業療法ぱすともいえます。実習指導に限らず、現場での(主に精神科ですが)作業療法に対して使えるのではないかと思っています。

 

①自分の思う作業療法の流れを自身で見ることができる。

本ツールはクリニカルパスの形式を用いた実習進行表です。クリニカルパスは特定の行いに対しての進行表であり、製作者には特定の行いへの進行や内容を表現できることが求められます。よって、実際に実習指導支援ツールを自身で作る際には自身の作業療法の内容を実習期間を意識しながらステージ分けを行い、さらに一連の流れとして表現することで完成します。つまり実習指導支援ツールを製作するということは作者自身の作業療法を自身で表現することになるので、事前に自身の作業療法への考え方や行い方、それが学生に伝えれる状態であるか、内容が妥当かを自身で客観的に見ることができることになります。さらに勇気をもって行動すれば、先輩や同僚に自身の作業療法や指導の内容を確認してもらうことも可能です。

 

 これまでは、実習指導の内容は実習中にしか触れることはなく、また個々の作業療法の内容や考え方についても症例検討や発表でしかきちんと形にする機会はありません(業務内での治療計画は形骸化している可能性もあります)。しかし本ツールは実習指導のために自身の作業療法の内容や考え方を具体的に形にする機会になります。

 

 

②他者に自身の作業療法の内容や考え方を具体的に伝えれるようになる(治療内容の可視化)。

①でも述べましたが、自身の作業療法の内容や考え方を具体的に形にできるということは、具体的に他者に伝えれるということです。これまでは口頭や症例でしか伝える手段はなく、また普段の治療計画も業務の中での作業なので、細かい流れまでは表現できないでしょう。本ツールはあくまで製作者の作業療法の内容や考え方を治療の流れとして表現するので、製作者=指導者の作業療法の根幹の部分を表現するということになります。

 

 

③自身の作業療法の内容や考え方を振り返る機会になる。

本ツールを他者に見せるということは、具体的に他者に自身の作業療法の内容や考え方が他者にさらすということにもなるので、製作者はきちんと言いたいことが表現できているか、また内容に不備やいい加減なところがないか、かなり気合を入れて・・・ではなく丁寧に製作することになるでしょう(実習地単位で製作しても同様でしょう)。またツールには表現されていても普段はそこまでやっていないようなことも記載することも出てくるでしょう。このように、ただ作るだけでも自身の現状を自覚する機会になります。

 

④自身の不足を自覚し、補おうとする意識が生まれる(かもしれない)

実習指導支援ツールを使って学生に指導をするということは、その内容と同様の治療内容を普段の治療場面で行っているということになります。やってもいないことや理想論を学生にもっともらしく指導するわけにはいかないですからね。逆にツールに書いていることを自分で責任を持って行動することができれば内容は真実ということになります。よって、ツール化するということは自身の作業療法の基本を自らに示すことになるので、普段の治療場面での不足を自覚し、補うきっかけにもなります。つまり自身で自分の課題に気付き、取り組むきっかけになるということです。

 

以下工事中 m(u_u)m

 

 

⑤実習内容について、養成校や担当する予定の学生と共有することができる。

・・・ここまでが、指導者側、学生にとってメリットになること・・・

 

以下は養成校や学術的なところにメリットとなることです。

⑥指導内容について養成校の要望を取り入れることができる(臨学一致)

⑦実習地単位で製作すれば指導者ごとの指導内容にばらつきが出にくくなる

 この「指導内容のばらつきが出にくくなる」という項目は本サイト時から提唱していましたが、実際に職場単位で運用されている東北の大きな病院の理学療法部門での運用で証明されています。実際に実習指導の内容の統一を図る目的から製作されたとのことで、長期間の試行錯誤の末、ツールの完成という形で統一が成されたということです。ツールの完成に伴い、指導者ごとではなく施設としての指導内容を学生に提供することが実現し、また指導者ごとの能力や経験の差もツールが補完することにもなるので、指導者ごとのばらつきや方向性の違いは払しょくできたとのことでした。

 これは筆者も製作時に予想していたメリットでしたが、実際の運用が証明した一例となります。しかし、職場単位で製作するために乗り越えなければならない障害は大きいです。筆者がそれに対してうまく対処出来なかったため個人モデルの提唱のみにとどまっています。職場や部門単位で作るためには臨床実習に対しての管理者や役職者、年長者など影響の大きいスタッフの意識が重要になります(実習指導をどう扱うか、部門の治療への考え方など)。大変だと思いますが、得られるものは大きいので、ぜひ職場や部門単位での制作にチャレンジしていただきたいと思います。

 

 

⑧より多くの「実習指導支援ツール」を集約すれば、平均的=標準的な実習指導支援ツールに至るかもしれない。つまり、治療内容の標準化が目指せるかもしれない。

 ほかの分野は疾患による機能、能力障害に個人差は少なく、一律化しやすいかもしれません。本来精神障害も極端に大きな違いはなく、障害の在り方、作業の在り方、リハビリテーションの在り方も共通と思います。しかし精神科は評価と治療を並行して行わなければならなかったり対象と評価を共有したり確認することが難しいケースが生じやすく、そのため一律化し辛いように思えます。

 加えて対人関係の取り方、作業というか物事への価値観の違い、さらには上記障害や作業、リハビリテーションへのとらえ方において作業療法士ごとの個性(個人で在ることの個性でもあるので仕方ないでしょうが)もあって、こと精神科においては一律化することは他分野において困難であると思えます。

 そしてその影響が、精神科作業療法の士としての在り様において、平均化しづらい要因ではないかと思います。つまり、作業療法として大事にすべき部分や作業のとらえ方、作業療法士の役割や在り様が指導者ごとに一定でないため、学生に伝えるべき作業療法の内容や流れも同様に様々(というかばらばら)になってしまうのではないでしょうか。

 加えて筆者の印象ですが、精神科作業療法は算定重視になりやすく、治療内容よりいかに患者さんに参加してもらうかを作業療法士自体が重視してしまい(悪いことではない側面もありますが)、作業療法の意味合いを重視しきれない状況となりやすいのではないかと思います。そういった背景では学生に伝えるべきことを日頃意識したり整理するに至らず、指導者が何を指導してよいかはっきりできない事態が生じやすいのではと思います。加えて新人さんはきちんと伝えるべきことを持ち合わせれていないまま指導に臨むことにもなりかねず、結果学生の課題修正という後だしじゃんけんかモグラたたき方式の指導になるのではないかと思います。

 

 こういった現状に対して、「こうすればよいのでは」と提案することのできる方法が実習指導支援ツールではないかと思います。筆者のツールはクリニカルパスで言う「アウトカム方式」であり、行動内容そのものを掲載する形式で、文字通り指導(作業療法)内容そのものを伝える形式になります。

 現在筆者モデルはあくまで筆者の観点で製作したモデルであり、あまり一般的でないのかもしれません。でも、もしこの形式で現状の作業療法の内容や流れをきちんとツール化できれば、実習指導=作業療法のスタンダードというか基準を作るということにもなります。そうなれば先ほどから言っている作業療法士ごとのばらつきを防止し、一定の水準を保った作業療法の提供に繋がるのかもしれません。

 先にお伝えしましたが、某病院の理学療法部門ではタスク方式=実習指導内容の項目化による実習指導進行表としての実習指導支援ツールを完成させ、職場内での実習指導の一元化を果たしています。この病院をモデルケースと考えるならば、もっと大きなモデルケースに広げることも可能ではないかと思います。




実習指導支援ツール筆者モデルの問題とお願い

筆者の作った実習指導支援ツールは見ての通り、かなりの情報量になってしまっています。これは本ツールに対しての方向性がまだ定まり切れていないためです。この形を用いれば個々の作業療法士の考える精神科作業療法の評価と考察、治療計画を時系列的に関連を意識しやすい形で表現できると感じているため、あまり省略した形にしてしまうことでそのメリットが低下してしまうのではと感じているからです。また、簡略化しすぎると実習指導要綱の巻末についている予定表とあまり大差なくなってしまうのではといった恐れもあります。

 

しかし、現状では製作者以外には見辛く使いづらいものになっているのも事実です(他者はまだ指導内容の参考程度の使い方まで)。本ツールの現在の課題は内容もありながら使いやすい分量を達成することと思っています。

 

筆者のものは実際に使わなくても「俺(私)ならこうする!」と各自が本ツールを参考に自身や職場での実習指導支援ツールを作り、それによってこれからの作業療法士育成に役立てたり、自身や職場の作業療法への研鑽につながってほしいのが筆者の希望ですが、作ったり使う気にならなければ意味がありません。

 

また、筆者としては使ってもらうのはもちろんですが本心としては、興味を持たれた方が実習指導支援ツールを作ってもらうことのほうが願いです。それらを統合することで臨床実習のスタンダードとなるものが見つけられるのではないかと感じています。

 

 

このページを見て使ってみたい、製作してみたいと思われた方は、ぜひご連絡ください。。もしよければ筆者のできる範囲で協力させていただきます。